アメリカにおける非営利団体のあり方について②

アメリカ非営利団体のガバナンス

 『アメリカにおける非営利団体のあり方について①』では、アメリカの非営利団体の在り方は日本とはかなり異なることを説明し、税法上のルールについて少し解説しました。今回は「ガバナンス」についてです。

 一般的な非営利団体(NPO)にとって最も重要であることは「501(c)3」であるか否かだと説明しましたが、アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)が税法上、法人税の免税団体と認めた該当団体は、 組織としての公益性を何より遵守する必要があります。

 NPOの公益性の遵守は、理事会のリーダーシップの手腕にかかります。理事会は組織のミッション遂行管理と、それに伴うあらゆる決定を行う中枢機関なので、個々の理事も大きな責任を持たされます。そして、そんな責任のある立場でもアメリカのNPO理事は基本的に無報酬です。そのNPOで「スタッフ」として働く人の報酬や経費はもちろん計上できますが、日本のように「理事が職員を兼任し、報酬をもらう」ことはありません。むしろ理事は「ミッション遂行のために最も貢献する人間」ですから、多くの場合は高額寄付者や、高額寄付をする企業や個人を組織のために集めてこられる人が就任します。NPOの理事は誰でもなれるものではなく、企業経営者や大学教授、公益性のある活動で何らかの実績をもたらした人が就任するケースが多い理由は、理事の仕事は寄付金集め。どのくらいの寄付を募り集められるかが、理事の力量として最も問われます。

「利益相反」はご法度

 また、アメリカのNPOでは「利益相反」と見られる行為は徹底的に避けねばなりません。例えば、理事が関連する企業にNPOから仕事が発注されたり、理事に何らかの見返りがあることが起こるのはご法度で、NPO内に複数の同族理事が就任することも望ましくありません。たとえ高額寄付者であっても、アメリカでは厳しく精査されます。

マイノリティ理事の採用も、アメリカでは重要

 私がは現在子供の劇団の理事ですが、就任を依頼された理由は、過去にいくつか行った舞台製作の実績と共に、数年前に行った「能楽とオペラ」の舞台プロデュース実績が大きかったようです。この舞台は、「平家物語」を主題に「巴御前」の物語を伝統的な能と、アメリカのコンテンポラリー・オペラ両方の視点で観客に披露するという試みで、当時シアトルタイムス紙が一面で紹介するなど、一部でかなり高い評価を受けました。シアトルは特に「移民たちの文化を受け入れ、それらを学ぶ」という積極的な姿勢があるため、社会の多様性ニーズに説得力ある活動経験は一定の評価を受けます。

 私の場合は非白人の移民と言う「マイノリティの登用」としても、恐らく望ましかったのだろうと推測します。多様性を重んじるアメリカでは、こうした理事の背景も、組織に「公益性」をもたらす人物か否かという点において重要になるのです。

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