私が次の世代に残せるものは何なのか?

田上志保(映像ディレクター)

 人生の折り返し地点が過ぎるといろんな不安が見えてきて、誰かに救いの言葉を求めたくなるのかも知れません。まさに、私がそうでした。好きなように生きてきたけれど、本当にこれで良かったのか? 他に違う人生もあったのではないか、と……。そうは言っても、もう若くはないのだし、やり直すことはできないのだから、なんとか自分の人生を進んでいかなければなりません。

 『50代からの生き方のカタチ — 妹たちへ ——』を出版するという企画を聞いた時、迷える妹世代の私は、「姉たちの人生を知りたい!そこに何かを見つけたい!」と思いました。そして2021年夏、本の取材の現場に同行させて頂きました。それは私が長年、ドキュメンタリー映像を撮ってきたディレクターとしての興味でもありましたが、ひとりの女性として、これからの生き方を見つめ直す貴重な時間でもありました。

 12人の姉たちにお会いして、それぞれの人生を聞いていると、私が今こうやって生きてこられたのは、男性社会の中で先陣を切って闘ってきた姉たちのおかげなんだと強く感じました。12人の姉たちにはそれぞれ今も変わらぬ強い意思があり、何かを成し遂げてきた余裕も感じて、私なんか到底敵わないなと打ちのめされたのを覚えています。

 でも妹世代には、姉たちの人生を伝えていく使命があると思います。姉たちの言葉は、頑張ってもがいている女性たちの励みになるでしょうし、今はまだこれが他人事である40代以下の妹たちにとっても、将来の道標にきっとなります! ここに12人の未来のモデルケースがあるのですから。

 「ジェネラティビティ・ラボ」という考え方にも、とても共感しています。

子育てをしなかった私は、どこか後ろめたさのようなものをぼんやりと感じていましたが、親でもない、教師でもない立場から次世代継承に関わることができるのだとしたら、それは私の救いになるかも知れません。

 私が次の世代に残せるものは何なのか? 姉たちの背中を見つめて、考えていきたいと思います。姉貴に負けていられないぞー!

テレビ番組の編集中の田上さん。長年、ドキュメンタリー番組の制作を手掛けている

田上志保さん プロフィール:
フリーランスの映像ディレクター。広告代理店の営業を経て、映像制作会社のアシスタント・プロデューサーに。ロケ現場に通ううちに演出の方が面白くなり、監督を志す。企業VPや展示映像、プラネタリウムの70ミリフィルム大型映像の演出を数多く手がける。その後、テレビ業界に活動の場を移し、自然もの、紀行もの、医療、スポーツ、美術など、様々なジャンルの演出を経験。フジテレビ『ザ・ノンフィクション』、NHK『やまと尼寺 精進日記』など、「家族」や「食」をテーマにしたドキュメンタリーを中心に活動。他人の人生に没頭するあまり、自分の人生を棚上げしてきたことを少し後悔しつつ、人生の後半に何ができるかを現在模索中。

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