情熱を持ってチャレンジすれば不可能なことはない

鳥丸軍雪(ファッションデザイナー / 『50代からの生き方のカタチ』応援委員長)

 『50代からの生き方のカタチ——妹たちへ——』の出版、おめでとうございます。「自分にできる次世代継承とは何か」を模索している人は多くても、それを形にしてみようとアクションを起こす人は少ないものです。ですから、この本の企画を聞いたとき、エネルギーに満ち溢れた素晴らしいプロジェクトだと思いました。私は85歳になりましたが、後世に残したいものに情熱を傾けているひとりとして、この本の応援委員長をお引き受けしました。

 今、世界は速いスピードで変化を続けています。そんな中で起きた長期に及ぶ未曾有の新型コロナウイルスの蔓延は、人々に「考える余地」を与えてくれたと思います。人間にとって何が一番、大切なことなのか——私は、それは「原点に帰ること」、つまり自分というものを見つめて、「常に自分であるということ」だと思っています。

 年齢や性別に関係なく、大小の差はあれ、人は悩みや不安から逃れることはできません。私たちは独りで生まれ、独りで死んでいくという条件を受け入れて、この世に生を受けました。それは、生きるための様々な条件を独りで解決していくことに繋がるものだと思います。悩みや不安は、皆それぞれ異なる境遇と異なる状況の元に生じる問題ですから、誰にでも有効なアドバイスなどはなく、最終的には自分の問題は自分で解決しなければなりません。

 ですから、まずは自分の限界を知ることです。人は様々なことにチャレンジすることも大切ですが、自分の限界を見極める能力を知ることも大切です。自分に偽らないことは自信になる——。だから、自分に正直に生きてください。自分が幸せになることで、周囲の人たちを幸せにできるのです。

 世の中は、絶えず動き続けています。動いているものに、すがりつくのではなく、時の流れに沿って前進する以外には、できることは何もありません。好奇心を旺盛にして人の話に本当の意味で耳を傾けましょう。若い世代を尊重し、若者とかかわり、若者から学び、「今の若者の問題は」ではなく、「今の若者の素晴らしさ」を称えましょう。自分とは逆の人の立場に心を置けるゆとりが生まれたら、今まで味わえなかった深い幸せが味わえると思います。

 人間は自信を持っている時が最も輝いて見えます。50代からの人生は、そんな穏やかで寛大な人間になれるように自分を磨きあげるチャレンジの時でもあります。今まで知らなかった自分をこの機会に発見してください。人生に近道はありませんが、情熱を持ってチャレンジすれば不可能なことはない——これが私からのメッセージです。

流れるように優雅なドレープと独創的なカットで「ドレープの魔術師」とも呼ばれる鳥丸軍雪さん

鳥丸軍雪さんプロフィール:
鳥丸軍雪(とりまる・ぐんゆき)。1937年、宮崎県生まれ。1959年に渡英。パリで世界的デザイナー、ピエール・カルダンのアシスタント・デザイナーを経て独立。プリーツやドレープを駆使した独自のスタイルで作品を発表して国際的な評価を獲得し、ヨーロッパでは各国皇室のオートクチュール・デザイナーとして知られている。英国王室の故ダイアナ元皇太子妃やスウェーデン王国のシルビア王妃などは、顧客のひとり。1986年にダイアナ妃が来日された際にまとったロイヤルブルーのドレスも鳥丸の作品。日本においても、黒柳徹子ら多くの著名人の衣装を手掛けている。英国在住。

妹たちへ書籍バナー
おすすめの記事