日本とは異なる非営利団体の運営
「社会貢献」や「社会還元」という言葉からすぐに連想するのは、非営利団体(NPO)の存在ではないでしょうか。アメリカの非営利団体の在り方は、日本とはかなり異なります。最も異なるのは「税法上のルール」と「ガバナンス」ですが、アメリカの非営利団体(NPO)は分かりにくいので数回にわけて解説していきます。今回は税法上のルールについて説明しましょう。
企業が非営利団体に積極的に寄付する理由
アメリカにはいくつか非営利団体として認められる団体があります。公益法人、宗教法人、共益法人と様々ですが、一般的なNPOにとって最も重要なことは「501(c)3」であるか否か、です。
「501(c)3」とは、 アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)が税法上、法人税の免税団体に該当する 団体に付与するもので、これに該当する団体は公益性が認められ、 寄付金控除の対象となります。アメリカでは日本では考えられないような高額を個人や企業が寄付する話をよく耳にしますが、ほとんどの場合、寄付する先は「501(c)3」該当団体です。
秋になると、NPOの多くはファンド・レイジング・イベントを行います。理由はアメリカの税金の締めが年末だから。その年の税金額が見えてくる時期になれば、それが企業でも個人でも「支援できる金額」の予測が立つため寄付をしやすい時期なのです。とはいえ控除の%として認められる額は、寄付をした全額とは限りません。たとえばファンドレイジングのパーティーへの参加費が寄付金換算される場合もあれば、参加費の中で純粋に寄付金の部分のみが認められる場合もあります。そのイベントで食べ物やお土産が出る場合などは、そこは寄付控除にはならないとか、公益法人ならば個人所得税において調整総所得の50%の限度額があったりします。
非営利団体がリードする、コミュニティ形成
アメリカは歴史が浅い国ですが、若い国だからこそ、米国民にとって「コミュニティ」形成が国家基盤の肝でもありました。米連邦政府が成立したのは1776年ですが、それ以前にも共有で使う公共施設と呼ばれるものを移民たちが1から築き上げる必要がありました。こうした背景もあって、富める者が資産を提供して人々の役に立つインフラに投資する等の循環が生まれたのかもしれません。
今のアメリカにはコミュニティがある場所には、そのコミュニティを代表する非営利団体が必ず存在します。世界に名だたるメトロポリタン美術館や、 ハー バード大学なども NPOであることはあまり知られていませんが、アメリカの非営利団体の歴史はコミュニティの歴史から学べるとも言えるでしょう。