日本最高峰の靴下工場を残すことが出来るか?
次世代に残したいものがある、伝えたいことがある……そんな想いで活動されている方々を井垣伸子センター長がインタビューするシリーズ。記念すべき1回目は、アイ・コーポレーション代表取締役社長、西村京実氏にお話を伺いました。
みんなのジェネラボ・ポイント(井垣センター長コメント)
西村さんご家族は以前は靴下の下請け工場を所有していたが、20年前、中国勢に押され工場を閉鎖した苦い経験をもつ。その際、廃業することも考えたが、100年続く家業をここで途絶えさせてもよいものだろうかと思案し、2015年に高級靴下の自社ブランドをたちあげ、その企画販売会社として存続させようと決意したのが4代目社長 西村京実氏だ。
カシミア、シルク、GIZA45などの厳選素材を使い、国内最高級靴下ブランド イデ・オム(ide homme :フランス語で理想の男性という意味)で勝負にでた。高いものだと、1足1万2000円あまりもする高級靴下の売り込みに奔走する。靴下は金属ピンではなく手をかけて糸で閉じた。そして、日本香道の香り袋とともに、越前和紙に包み、桐箱に入れて、真田紐をかけた。こだわりの靴下にふわしいこだわりの和の包装をほどこして、心のこもった国産高級ギフトが完成した。
しかし、これまでになかった高価格設定の商品たちは、なかなか市場に理解してもらえない。そんな中、2018年に、ユナイテッド・アローズの重松会長がプロデュースする、国産最高級セレクトショップ順理庵が銀座にできる。さっそくそこに商品を見せにいくと、2日後に重松会長から直接メールが届き、順理庵に商品をおかせてもらえることになる。順理庵は、“美意識の高い日本”をたった8坪に詰め込んだ和のスペースであり、日本の伝統的な手法で織られた生地を日本の工場で縫製した衣料品など、厳選された日本製品が取り揃えられていて、たちまち、全国のバイヤーたちがひっきりなしに訪れる有名スポットとなっていた。
重松会長は、京都・鷹峯に「日本と日本人の高い精神性と美意識が詰め込まれた施設の創造を通し、日本の一つの真正なる美の基準=THE GENUINE NIPPON STANDARDを次世代に伝承し継承を施すこと」を理念に掲げて開業した文化施設「洛遊居」をもっており、順理庵は、その「洛遊居」の雰囲気を体感できる店舗としてつくられたものである。
重松会長により見いだされたイデ・オムは、次第に雑誌などに取り上げられるようになり、少しずつ知名度をあげてきたが、2022年、イデ・オムの主力商品 GIZA45を製造している最高峰の靴下工場が閉鎖することになった。GIZA45は、繊細なコットンで、これを扱える工場も、職人も、日本ではここにしかない。この会社存続の危機に際して、西村社長の取った行動とは? 彼女の物語から、私たちは何を学ぶべきだろうか?
西村京実プロフィール
プロフィール
1970年生まれ。大学卒業後、カナダとフランスに3年間留学。帰国後、経営コンサルティング会社、IT企業を経て、28歳で靴下業界の老舗名門企業である家業に入る。明治35年(1902年)に西村商店として靴下の製造を始めた西村信次郎氏を曽祖父にもち、二代目の祖父は日本靴下協会の理事長を努めた。現在は、国内最高級の紳士靴下ブランド「idé homme(イデ・オム)」、 大人の女性のためのストッキング「LISOIR(リソア)」、遠赤外線パワーを応用した保温保湿靴下ブランドの「かかと工房」を展開している。上質な素材やこだわりの包装、日本のものづくりの技術によるレッグウェアを提供している。
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