新しい「能のカタチ」を模索してほしい

武田宗典(観世流シテ方能楽師、重要無形文化財総合指定保持者)

 『50代からの生き方のカタチ——妹たちへ——』の刊行、おめでとうございます。激動の昭和を生き抜き、それぞれのやり方で歴史を作ってこられた12人の方々のメッセージを真摯に受け止め、考えさせられました。

 私は能楽師です。能楽には、「長年積み重ねられ蓄積された、絶対に変えてはいけない部分」と、「時代のニーズに合わせて見せ方を変え、能楽の可能性を拡げていく試み」の両輪が必要であると考えています。芸の根幹となるものを大切にしつつ、常に探求心を持って発展させ続けていくためには、様々な分野にアンテナ張り巡らせ、様々な試みを続けていくことが、やがて芸の枝葉となり、次世代の希望となると考えます。その積み重ねが、芸能としての次世代継承ではないでしょうか。

 これまで私がこの仕事を続けられたのは、一般的に想像される以上に、能楽の世界がクリエイティブであるからかもしれません。先人達から伝えられた芸の本質を自分たちが次世代に伝えていくことはもちろんですが、次世代の人たちが私たちの生き様を見て刺激を受け、新しい「能のカタチ」を模索していって欲しいと願っております。私もこれからも精進いたします。

武田宗典さん プロフィール:
1978年生まれ。観世流シテ方能楽師、重要無形文化財総合指定保持者。観世流シテ方職分・武田宗和の長男として父及び観世流二十六世宗家観世清和に師事。1980年、「鞍馬天狗」花見にて初舞台を踏む。現在は年間100公演ほどの舞台を務め、能の普及活動にも尽力。海外公演経験も多く、2014年9月にはシアトルで能とオペラを融合させた公演 『TOMOE+YOSHINAKA』 を実現した。公式サイト:https://takedamunenori.com/

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